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第2話「少女と少年」


 魔法陣から現れた黒いエレメンタルに、タライムは攻撃をためらった。

(黒いエレメンタル……サマナーとは何度も戦っているが、黒いエレメンタルなんて今まで一度も見た事がねぇ。相手の出方がわからねぇんじゃ、うかつに攻撃するのは危険だ。一旦様子を見たほうが……)

「どうした? 来ないのか?」

 攻撃を躊躇するタライムに、黒髪の少年が尋ねる。

「…………」

「そうか。ならばこちらから行く!」

 答えないタライムにしびれを切らし、黒髪の少年は黒いエレメンタルに命じた。

「奴を殺せ、コク!」

 黒髪の少年の命ずる通りに、黒いエレメンタルがタライムに向かって来る。タライムも応戦するべく二本の剣を交差に構えた。

 黒いエレメンタルがタライムに迫る。すると、エレメンタルの両手が輝き、鋭い刃へと変化した。

「両刀か!?」

 コクと呼ばれたエレメンタルがタライムに切りかかる。タライムは両手の剣でその攻撃を受け止めた。

(スピードもある。レッドより速いか!?)

 コクの立て続けに繰り返される攻撃を、二本の剣を器用に使って受け止める。このような芸当は、いまやほとんど絶滅した二刀流使いであるタライムだからこそ出来るものであった。

「ちっ……」

 黒髪の少年が一旦エレメンタルを呼び戻す。タライムも一度少年と距離をとり、一息ついた、その時だった。

「ハッハー! おい、見たかマスター。こいつ二刀流だ! 俺と同類だぜ!」

「なっ!?」

 声を発したのは少年ではない。声を発したのは、少年のもとに呼び戻された黒いエレメンタルであった。

「うるさいぞ、コク」

「こいつはすまねぇマスター」

 黒髪の少年が当然のように黒いエレメンタルをたしなめる。だが、その光景はタライムを含めた大半の者達にとっては異様な光景だった。

(喋るエレメンタルだと? そんなものが存在したとは……)

 タライムも数々の優秀なサマナーと出会ってきたが、エレメンタルと意思を通じた会話を行った者など今までに一人もいなかった。

「お前、何者だ?」

 タライムが黒髪の少年に尋ねる。

「知ってどうする? どうせお前はここで死ぬ」

 黒髪の少年はつまらなそうにそう答えた。

「あっそう。じゃあ、力ずくで教えてもらおうかな」

 そう言うと同時に、タライムは一気に加速して黒髪の少年に襲い掛かった。

「!?」

 不意をつかれた少年が黒いエレメンタルを繰り出す。だが、タライムは目にも留まらぬ速さで二本の剣をなぎ払った。

「おろ?」

 タライムの剣により、黒いエレメンタルが腹の辺りから真っ二つに切り裂かれる。そのままスピードを落とさずに、タライムは少年に迫った。少年がすぐさま呪文を唱え始める。

(無駄だ! 今から修復しても俺が到達する方が速い!)

 タライムが勝利を確信した、その時だった。

「何!?」

 呪文を唱え始めた少年の隣に、新たな魔法陣が生まれる。そして、魔法陣から新たなエレメンタルが召還された。

「今度は白いエレメンタルだと!?」

 少年の予想外の行動に、タライムが一瞬のためらいを見せる。その隙を、黒髪の少年と白いエレメンタルは見逃さなかった。

「ハク、やれ」

「了解しました、マスター」

 少年の命と同時に、白いエレメンタルの両手から波動のようなものが発せられる。波動は水面に広がる波紋のように、少年を中心にして広がっていった。

「うお!?」

 その波動を受けたタライムの身体は、波紋の外へと押し出されるように弾き飛ばされた。

(そうか! あの白いエレメンタルが奴の周りに防御壁を作り、黒いエレメンタルで遠距離から敵を攻撃するわけか)

 タライムが空中で体勢を立て直し、地面に着地する。だが、着地の際に若干バランスを崩した。その隙を逃さず、修復された黒いエレメンタルがタライムを襲った。

「ハッハー! 万事休すだな!」

 タライムが防御の体勢を取る間もなく、黒いエレメンタルの鋭い両腕が振り上げられる。衝撃と痛みに備え、タライムは思わず目を瞑った。しかし、

「!?」

 黒いエレメンタルの攻撃がタライムに命中する前に、二発の銃声が辺りに響き渡った。

「ぎゃあ!?」

 銃弾を受けた黒いエレメンタルが短く悲鳴を上げる。その間に、タライムは防御の姿勢を作ったまますかさず後退した。

「大丈夫ですか!?」

「ああ。助かったぜレオナ」

 タライムが背後にいるレオナに礼を言う。

「また部外者……」

 レオナを見た黒髪の少年は不機嫌そうに呟いた。

「タライムさん、彼は……?」

「原住民らしいが、気をつけろ。かなり手ごわいぞ」

 タライムの言葉に頷きながら、レオナが銃を構える。

「いってーな、そこの姉ちゃん! この俺様に二発も撃ち込むとはどういう了見だ!?」

 黒いエレメンタルがレオナに向かって怒鳴り散らす。

「ご、ごめんなさい……」

 そのあまりの剣幕に、レオナは相手がエレメンタルなのも忘れて思わず謝ってしまった。

「ふん。まぁ、俺様は女性には優しいからな。今回は……」

「さっさと戻って来い、コク!」

 一人喋りまくる黒いエレメンタルに、黒髪の少年が苛立った声をぶつける。

「へぇへぇ……わかりやしたよ……」

 その言葉に、黒いエレメンタルは不満そうな声を漏らしながら渋々少年のもとに引き返した。

「もう一度言うぞ? 話し合うつもりはねぇか?」

 タライムが再度黒髪の少年に尋ねる。

「ない。お前らはここで死ぬ」

 少年は間髪いれずそう答えた。

「仕方ねぇなぁ……」

 タライムが二本の剣を構えなおす。そして、再び両者の間の緊張感が高まってきた、その時だった。

「こらーーー!!」

 突然、少年の背後から甲高い声が響いた。同時に、黒髪の少年の頭上に巨大なハンマーが現れる。そして、

「ごふっ!?」

 巨大なハンマーは、見事少年の頭に振り下ろされた。あまりの衝撃に、少年がうつぶせのまま地面に倒れ、ぴくぴくと痙攣する。

「…………」

 あまりに突然の出来事に、タライムとレオナがあっけに取られる。倒れた少年の後ろには、巨大なハンマーを持った一人の少女が仁王立ちしていた。


第2話 終